厚生局による指導・監査への対応のコラム

厚生局(及び都道府県)による整骨院・接骨院(柔整師)の指導への対応について、説明をします。


健康保険の療養費について、不正請求の疑いが生じると、厚生局(及び都道府県)が、個別指導を実施し、その結果、なお不正請求の疑いが濃厚である場合は、監査が実施され、受領委任の取扱いの中止への流れとなります。個別指導の実施に先立って、患者調査が行われることが散見されます。

具体的な柔道整復師への指導、監査の流れについては、個別指導(整骨院・接骨院,柔整師)のコラムが参考になります。

整骨院の個別指導については、基本的には、医科、歯科、薬科、あはき(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師)の厚生局の個別指導とも類似の仕組みとなっており、横断的に仕組みを知ることで、個別の個別指導についての理解が深まる側面があります。

そこで、例えばあはきの厚生局の個別指導、監査(鍼灸マッサージ)の事例など検討をすると、同様の受領委任の取扱いに係る厚生局の指導監査の仕組みであり、整骨院の場合の検討においても有用な発見があると思います。歯科の個別指導、監査については、以下の書籍に流れや対応法について詳しく記されています。

 『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政分への対応法』

こちらについては、医道審議会の行政処分までの一連の流れが説明されています。

歯科個別指導の流れを理解するためには、厚生労働省の指導監査に関する公表資料を熟読することも有用です。しかし、整骨院の指導監査については、十分な資料が公表されているとは言い難いかもしれません。この点は、1年間の個別指導の実施件数が、医歯薬と柔整でまったくことなっていることが背景にあると考えられます。医歯薬では、基本的に、1か月のレセプトの平均点数が高い診療所に対し、個別指導が実施されますが、柔整では、不正請求の情報提供があった施術所に対して実施されることが原則となっています。その結果、個別指導の実施件数が柔整では少なく限定されており、業界団体におけるノウハウの蓄積に大きな差が生じる原因になっていると思われます。

歯科個別指導については、実施通知が届いたからといって、慌てる必要はないというべきですが、整骨院の場合は、監査になる可能性を踏まえ、適切に対応しなければならないことを強く留意すべきでしょう。

指導の実際の状況、流れとしては、厚生局が公表している受領委任の取扱いの中止の実例が参考になります。一例を挙げますと以下のとおりです。なお、事例は、九州厚生局の中止の実例であり、表現等の一定の修正等を行っています。


【柔道整復師への指導監査への流れの実例】

1.受領委任の取扱いを中止とした主な理由

不正請求

① 実際には施術を行っていないにもかかわらず、施術を行ったものとして施術録に不実記載し、療養費を不正に請求していた。

② 実際に行った施術に行っていない施術を付け増して、療養費を不正に請求していた。


2.監査を行うに至った経緯等

(1) 平成28年12月、九州厚生局鹿児島事務所及び鹿児島県に、整骨院の患者に対して文書照会を行った保険者から、照会期間内には施術を受けていない患者がいるなど不正請求が疑われる旨の情報提供があった。

(2) 平成29年5月、開設者で施術管理者でもある柔道整復師に対し個別指導を実施したところ、柔整師が、実際には施術を行っていないにもかかわらず、施術を行ったものとして療養費の請求を行ったことを認めたため、個別指導を中断した。

(3) 平成29年10月に患者調査を実施したところ、平成28年中は整骨院では一度も施術を受けていない旨の回答を2名から得た。

(4) 平成29年10月に個別指導を再開したところ、療養費を請求しているにもかかわらず、その根拠となる施術録が作成されていないものや、同一患者の同一年月分の施術録が2部作成されているなどの事実が判明し、不適切な請求を行っていることが強く疑われたため個別指導を中止し、平成29年12月に監査を実施した。


上記事例にコメントをすると、個別指導で不適切な請求について認め反省を示した場合、必ずしも監査に移行するわけではないのですが、本件は、いわゆる架空請求の不正請求であり、悪質と判断されるべきものであるため、柔道整復師が個別指導で認めても、監査に移行したものと思われます。

個別指導の公表実例については、柔道整復師へのものだけでなく、歯科医師の個別指導、医師への厚生局の個別指導なども、基本的な仕組みは同様ですので、参考になるというべきです。

どのような経緯で個別指導となっているか、どのような方針で対応するか、どのような流れが見込まれるかなど、十分に検討の上で、厚生局の指導監査に詳しい方に相談し、第三者の知恵をかりつつ判断していくことをお勧めします。

記事一覧