医療機関への個別指導の実例
個別指導の実例についてご説明します。
ここでは、医療機関(医科)への厚生局の個別指導・取消しのコラムで紹介されているような、厚生局の取消の実例を取り上げます。整骨院に対する個別指導・中止と同様に厚生局の指導課などが実施するもので、手続きに共通点があり、医療機関への指導監査を知ることで、整骨院への個別指導・受領委任の取扱いの中止についての理解を深めることに繋がるためです。
1 開設者・管理者の医師の名義貸しでの個別指導
医療業界においては、医師の資格が価値が高く、資格者の数が資格が必要なポスト数に比して過少であるため、人材を確保することのハードルが高いという実情があります。その結果生じることが、医師の名義を借りてビジネスを行おう、という状況です。
個人レベルの診療所でよく問題となるのが、診療所では管理者が常勤の医師であることが求められるところ、常勤の医師が確保できず、そこで、名義を借りて非常勤のバイトなどの医師で実態としては診療所を運営していく、という事態です。これは、開業当初の段階から確信犯的に行われることもあれば、医療法人が分院を開設後、管理者が辞職してしまい、後任を確保できず、やむを得ず名義を借りて非常勤で後継が確保できるまでしのぐ、ということもあります。名義貸しの一類型として、個人の診療所にもかかわらず、株式会社などの真の経営主体が別にあり、実態は月給制の勤務医である、ということもあります。こちらも、種々の違法状態が生じるため、不適切なのですが、真の経営主体が関与する医療法人の分院開設手続きのリスク・煩雑さなどから、まずは個人の名義を借りて勤務医に勤務医の名義で開業させ、後に医療法人に譲渡させ吸収させる、ということがあるようです。
この名義貸しが、厚生局の指導監査で問題となることもあります。例えば、新規個別指導が実施された際に、真の経営主体が別であることが厚生局に露見し、問題とされるケースがあります。個別指導でも、名義貸しをしている医師がその診療所で実際には勤務していないケースなどで、取消処分に至ることもあります。ここでは、その一例をご紹介します。より具体的な事情などは、以下のページを参照下さい。
開設者・管理者の医師の名義貸しでの個別指導・監査
東海北陸厚生局の実例です。
東海北陸厚生局が新規個別指導を実施した際に、開設者・管理者である医師が、診療所に一度も行ったことがないと回答し、名義貸しが疑われたため、個別指導が中断されました。一度も行ったことがないのに管理者をしていて、かつ、新規個別指導に出席するという事態が驚きですが、現実に存在する事態ということです。
その後、その診療所の廃止届が提出されましたが、名義貸しが疑われ診療報酬の請求での不正が強く疑われたため、監査が実施されました。
監査の結果、虚偽の保険医療機関の指定申請や虚偽の施設基準の届出などの事実が確認され、取消相当となりました。監査で確認された不正請求の金額は、387万966円です。
2 無診察での不正請求と個別指導
個人の診療所などで診察時間が多忙で診療時間が取りづらいケースなどで、無診察で無資格者が処方せんを出してしまう医療機関がありますが、これは典型的な不正請求となります。このような不正請求は、処方せんを応需する薬局側も気づくことも多いはずで、そこでのチェック機能が期待されますが、実際には、なあなあになってしまうこともあるようです。薬局としては、薬局側は無診察処方を知らなかった、という態度を示し、弁解をするのだと思われます。もっとも、処方せんが絡む不正請求について、以下の事例のように、診療所の個別指導と薬局側の個別指導が連動して実施されることもあります。
医療機関(医院)の個別指導と薬局の監査
ここでは、医師の診察なしで無資格者が処方せんを出し不正請求での個別指導、監査、取消しとなった一事例をご紹介します。無診察での処方せんの交付は、忙しい際に、患者から求められ善意で行ってしまうこともあるかもしれませんが、違法行為であり、厳に慎まなければなりません。本ケースの具体的な事情などは、以下のページを参照下さい。
無診察での不正請求と個別指導、監査
中国四国厚生局の事例です。
匿名の者から、中国四国厚生局の指導監査課に不正請求の情報提供が文書でありました。そこで、中国四国厚生局が、個別指導を実施したところ、疑義が解消されず、指導を中断し、再開後も医師から明確な回答がなく、再度、指導を中断し、患者調査を実施の上、指導を中止し監査に移行しました。
監査の結果、無診察で保険診療と認められない不正請求、無診察で無資格者が院外処方せんを発行していた不正請求などが認定され、取消処分となりました。不正請求の金額は、監査で認められたものとして、135万2442円です。
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