医科の保険医療機関への個別指導

医科の保険医療機関などへの個別指導の実例をあらためてご紹介します。なお、医科の保険医療機関への個別指導の選定基準や選定方法などは、厚生局の個別指導の対象医療機関の選定方法のコラムが参考になります。


前回のコラムに続き、指導監査の実例をご紹介します。すべて厚生局の公表事例に基づくものです。事例の理解は、歯科、薬局、柔整においても、実際の指導監査の際に役立つものと思われます。


1 訪問看護ステーションの個別指導

診療所ではありませんが、訪問看護ステーションに対しても、厚生局の個別指導、監査、取消しの仕組みがあります。件数としては医療機関に比して少数ではあるものの、訪問看護ステーションにおいても、取消しとなった実例があります。その一例をご紹介します。事案の詳細は、以下のページをご参照ください。
 訪問看護ステーションの個別指導

関東信越厚生局による取消しの実例です。

厚生局に対し、匿名の者から、訪問看護を受けていないのに請求されているとの情報提供がありました。すなわち、不正請求の情報提供であり、取消処分に至る個別指導が開始される典型的な流れです。そして、個別指導が実施されましたが、入院中であるのに訪問看護療養費が請求されており、不正が強く疑われ、指導が中止とされ、監査に移行しました。

監査の結果、架空請求などの不正請求が確認され、取消しとなりました。確認された不正請求の金額は、54万7554円です。


2 子供の診療の不正請求

子供の保険診療では、自治体によって、医療費の一部負担金が定額または免除・無料となる場合があり、そのような状況では、患者の自己負担の意識、当事者意識が希薄になり、少しくらい付け増しても患者の負担額は変わらないしかまわないだろうと、医院側が実際に行っていない診療を行ったことにして診療報酬の請求を付け増してしまうなどすることがあるようです。当然、不正請求であり、厚生局が知るところとなれば、保険医療機関の指定の取消処分をされることがあります。ここでは、その一例をご紹介します。詳細は、以下のページをご参照ください。
 子供の診療の不正請求

近畿厚生局の取消処分の実例です。

近畿厚生局に対し、患者から、診療を受けていない子供に処方されたものとして保険請求され、不正請求がなされているとの情報提供がありました。この情報提供がなされたきっかけは定かではありませんが、経験的には、何らかの患者と医院側とのトラブルをきっかけに、患者からの情報提供に至るケースが見受けられるところです。

個別指導を実施したところ、医師から不正請求を認める発言があり、指導を中断し、再開後、あらためて医師が不正請求を認めたため、指導を中止し監査に移行されました。

監査の結果、架空請求などの不正請求が確認され、取消処分となりました。確認された不正請求の金額は、120万3150円です。


3 14日後付け処方せんでの個別指導、監査

一度に処方できる薬剤の日数分にはルールがありますが、医院が忙しかったり、患者から希望されたりした場合に、このルールを破ってしまう医師もいるようです。しかし、ルール違反であり、不正請求ですので、厚生局が把握すれば、保険医の取消しなどの処分をされる可能性があります。ここでは、その一例をご紹介します。具体的な経緯は、以下のページをご参照ください。
 14日後付け処方せんでの個別指導、監査

近畿厚生局の取消相当の実例です。

患者の家族から、厚生局に対し、処方せんを2枚貰っており、1枚は交付日が14日後の日付になっているとの情報提供がありました。そこで、厚生局は、個別指導を実施し、医師が不正請求を認めたため、指導を中断したところ、保険医療機関の廃止届が提出され、そこで、廃止の結果、保険医療機関ではなくなったので、個別指導を再開できず、監査の実施に至りました。現に保険医療機関でないと、個別指導は実施できないためです。

監査で付増請求の不正請求の事実が確認され、取消相当となりました。確認された不正請求の金額は、45万6933円です。

厚生局の指導への対応のコラム

厚生局の指導に関するコラムです。厚生局から実施通知が届いてしまった場合、ご活用下さい。